2015/02/01

歌詞 和訳 Sting - Russians (スティング - ラシアンズ)

Sting - Russians (スティング - ラシアンズ)
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Song by Sting

クラシック曲のサンプリング・ソング、第7弾。



イギリスのロックバンド・ポリス(The Police)でリード・ヴォーカルを務めるスティングが、
1985年にリリースにリリースした1stソロ・アルバム"The Dream of the Blue Turtles"より、
"Russians"の歌詞を和訳してみました。

ポリスは1984年に活動をいったん休止していて、その翌年にリリースされたアルバムです。

ロシアの作曲家、セルゲイ・プロコフィエフ(Sergey Prokofiev)によって書かれた、
"キージェ中尉"の第2曲をサンプリングした"Russians"は、
当時の東西冷戦批判という政治的なテーマに触れた、メッセージ・ソング。

この曲を最初の聴いた時の印象は、すごく複雑。
綺麗だけど哀しげで、だけどどこかやさしさを感じて、でもまだ何か足りない…
言葉じゃうまく言えないけど、すごく大切な気がする、とにかく感慨深い曲でした。

その時は、歌っている詩の意味も分からず、ただ聴いていたけど、
詩の意味を知った今でも、その複雑な想いに答えが見つからないな。

今のこの時が、日本の人々にとって、多くの人類にとって、
戦いに染まった歴史の合間に生まれた、数十年の平和で終わらないように。
そして、今も戦いのそばで生きる人々に平和で豊かな時代をと願います。



【英語 & 日本語 対訳】
"In Europe and America, there's a growing feeling of hysteria
Conditioned to respond to all the threats
In the rhetorical speeches of the Soviets
Mr. Krushchev said we will bury you
I don't subscribe to this point of view
It would be such an ignorant thing to do
If the Russians love their children too"

ヨーロッパやアメリカの中には ヒステリー感情が高まっている
どんな脅威にも反応するように慣らされてしまったんだ
口先だけで言葉ばかり飾られたソビエトのスピーチで
フルシチョフは言った “我々は君を葬り去るだろう”
僕はこの考えには同意できない
ロシアの人々が心から子どもたちを愛しているなら
その行為はあまりに無知なことだ

"How can I save my little boy from Oppenheimer's deadly toy
There is no monopoly in common sense
On either side of the political fence
We share the same biology
Regardless of ideology
Believe me when I say to you
I hope the Russians love their children too"

どうすればオッペンハイマーが作り出した命がけのオモチャから 僕のちいさな子どもを守れるのか?
国を隔てるフェンスの両側で
常識という観念を独り占めする権利なんてどちらにもないんだ
イデオロギーに関わらず
僕たちは人として同じ生を受ける
僕が君に言うことを信じてくれ
僕は願う ロシアの人々が心から子どもたちを愛していると

"There is no historical precedent
To put the words in the mouth of the President
There's no such thing as a winnable war
It's a lie we don't believe anymore
Mr. Reagan says we will protect you
I don't subscribe to this point of view
Believe me when I say to you
I hope the Russians love their children too"

大統領の口から飛び出す言葉に
歴史的な前例なんてないんだ
勝ち目のある戦争なんて本当に存在しない
そんなものは嘘で 僕たちはもう信じやしない
レーガンは言った “我々は君を守るだろう”
僕はこの考えには同意できない
僕が君に言うことを信じてくれ
僕は願う ロシアの人々が心から子どもたちを愛していると

"We share the same biology
Regardless of ideology
What might save us, me, and you
Is if the Russians love their children too"

イデオロギーに関わらず
僕たちは人として同じ生を受ける
ロシアの人々が心から子どもたちを愛しているなら
その想いが僕たちを救うだろう 僕を そして君を…




Memo:
conditioned to = ~に慣れる
rhetorical = 修辞上の 修辞効果を狙った / 美辞麗句の
Mr. Krushchev = (※ソビエト連邦第4代最高指導者、ニキータ・フルシチョフ)
subscribe to = 同意する
Oppenheimer = (※原子爆弾の開発を行い"原爆の父"と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマー)
deadly = 致命的な 致死の 命取りの
Oppenheimer's deadly toy = (※原爆を指すメタファ)
on either side = どちらの側にも 両側に 左右に
biology = 生態
ideology = イデオロギー
Mr. Reagan = (※アメリカ合衆国第40代大統領、ロナルド・レーガン)




片方が“葬り去る”と言い、もう片方が“守る”と言う。
でもそれは、どちらに寄り添うかで立場が逆転するだけで同じこと。
だからどちらにも賛成できないということだと思っています。

物事に必ず始まりがあるなら、戦争の始まりは何なんだろう。
始まりの瞬間さえ分からないような争いを、どうやって終わればいいのだろう。

歌が示すように、脅威に対する慣れが植えつけられ、
怒りや恐れの感情に支配され、やがてそれが戦いに繋がるとしたら、
目に見える攻撃や、明らかなきっかけより先に、争いの火種を撒いたのは誰だろう。

子どもたちを愛する想いが人々を救うとしても、
子どもたちを愛せばこそ戦いを止められない人もいる。
複雑で根深く、一度芽生えてしまえば、簡単に消し去れないその想いに、
どうやって折り合いをつければいいのだろう。

人はなぜ争うのか、出口のない迷路に迷い込んでしまいます。

だから人は願うんだろうと思います。
歌の中で僕が願ったように、世界中の人々が心から子どもたちを愛し、
その想いが私たちを救ってくれるようにと。



Song by Sting

第28回グラミー賞(28th Grammy Awards)でのライヴ・パフォーマンスでした。




最後に"キージェ中尉"を紹介しておきます。


Performance by Yuri Temirkanov(Con) & USSR State Symphony Orchestra

"Lieutenant Kije Suite, Op. 60: II. Romance"
(組曲「キージェ中尉」 Op. 60 - 第2曲 ロマンス)

演奏はソビエト国立交響楽団、指揮者はユーリ・テミルカーノフ。

"キージェ中尉"は第4曲の"トロイカ"のほうが有名かな。



ここからは余談。

"キージェ中尉"の元となったのは、
ロシアの作家、ユーリイ・トゥイニャーノフが書いた"キージェ少尉"という小説。

1934年に、この小説を元に映画"キージェ中尉"が作られることになり、
それをモチーフに作曲されたのが"組曲「キージェ中尉」"です。


このストーリーがすごくおもしろくて、
詳しいあらすじは控えますが、ザッと説明するとこんなストーリー。

つまらないことで旧ロシア皇帝を怒らせてしまった臣下たちが、必死に言い訳しようと慌てふためき、
結果、"キージェ中尉"という存在しない人物に責任を押し付けてしまいます。

キージェ中尉はシベリアへの流刑に処されますが、
皇帝の思わぬ心変わりで罪を赦されるどころか、寵を得て美しい花嫁まで与えられることに。

今更、キージェ中尉が存在しないとは口が裂けても言えない臣下たちは、
なんと花婿がいないまま結婚式まであげてしまいます。

そうはいっても、色々とボロが出始め、これ以上ごまかしきれないと思った臣下たちは、
キージェ中尉が死亡したことにして、国をあげた葬儀まであげてしまうのです。

臣下の度重なる嘘も知らず、皇帝はキージェ中尉を悼んで涙を流します。


なにがすごいって、そもそもの罪とは、皇帝の昼寝を妨げたこと。
そこから始まる喜劇が何とも見事ですよね。

そんな些細なことで臣下を翻弄する皇帝と、
自らの保身のために国中を巻き込んだ嘘に奔走する臣下を描く風刺作品です。


貴重な映画映像もあるので紹介しておきますね。



英語字幕も付いています。


でね。この"キージェ中尉"を元ネタにした、藤子不二雄作品があるんです。

"エスパー魔美"っていう漫画に"ウソ×ウソ=?"という話があって、
それが藤子不二雄版"キージェ中尉"なんですよね。
(アニメでは第22話の"ウソ×ウソ=パニック"として放送されています)

ちなみに、この話、なんと"ドラえもん"とのクロスオーバー作品で、
ドラえもん、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫の5人が登場します。
それが気になって見たから知ってるんですけどね。

以上、どんどん脱線していく誰得トリビアでした。

1 件のコメント :

  1. 今の時代にはない雰囲気を感じますね。STINGもとても礼儀正しく見える。ロシアだけでなく、レーガンさえも批判してる歌をグラミー賞で歌うなんて、今の奇抜さだけの音楽にはない品格と信念の強さを感じます。とても楽しめました。

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